100年続く呉服屋マーケティング

コンサルの前は呉服屋に在籍していた私ですが、最近よく思い出します。(もう潰れたけど)

ネットを使わずに
ベタベタの商売をして150億作っていた。

何をしていたか?主に4つある

1-リストマーケ
2-VIP顧客に口コミ目的のプレゼントを渡す
3-強いクロージング担当
4-顧客の支払い状況の管理

時代的にヤバすぎるのもあるのでそこは割愛して今日は比較的ソフトな2について書く。

皆さんは新巻鮭(アラマキジャケ)はご存知?

お歳暮とか正月の贈答品で、シャケ一匹を丸ごと塩漬けにしたもの。

これをVIP顧客に渡すんです。

で、新巻鮭がなぜ口コミにつながるのか?という話。ここが大事です

鮭を一匹丸ごと見たらわかるのですが、めちゃデカイんです。70cmくらいあって、重さも3キロとかある。

筋トレの鉄アレイみたいなw

しかも干物にしてあるから塩分もキツイ。

そう、要するにそもそも「食べきれない」んです。

ならばもらった人は捨てるのか?

違います。

新巻鮭は縁起物で贈答品。受け取ったA様は高確率でご近所様に配るんですね。

お裾分け。

A様「すみません、頂いたものなんですが、ウチでは食べきれなくてよかったら一切れいかがですか?」

もらった方も鮭を一切れもらうくらいならば全然嬉しい。

そこで聞くわけです。

Bさん『どこで頂いたんですか?』

もうおわかりですね。

A様「あ、あの駅前の呉服店さんから頂いたんです。」

このフレーズの意味するところは大きい。

新巻鮭って一本丸ごと買うと普通に1万円はします。しかもご丁寧に桐の箱に入っていたりしますから高級感があるんですね。

それを贈り物でくれる呉服店さんって素敵ね。
何よりこのお隣のAさんは呉服店でお買い物をされるお金持ちなのね。

Bさん「キィィィィィ」(◀︎ちょっと悔しい)

新巻鮭をVIP顧客A様に1本贈るだけで、周辺近所の何軒かにお裾分けムーブを起こすことができます。

…という動きを呉服店サイドも理解しています。

A様担当営業マンは把握しています。

A様がどこの家に新巻鮭をお裾分けしたのか?

担当営業マンはしばらくすると、そのお宅Bさんを訪問します。(なんならA様に一回電話してもらって、担当の営業さんがご挨拶したいって言ってたよ、と前振り)

ピンポーン♪

「こんにちは、A様のご紹介でご挨拶に伺いました呉服店の最長老です!」

Bさん「あらー初めまして。ようこそお越しくださいました。」

Bさんはこう思ってる。

(遅いよ、最長老くん。もっと早くこなくちゃ、私こそVIPにふさわしくてよ。Aさんよりも私を見なさい。私に時間を使いなさい。さぁ、あなたは私をどうもてなしてくれるのかしら?)

たった1匹の鮭がもたらすVIP顧客開拓ストーリー。

お裾分けマーケティング。

100年商売が続くにはそれなりの理由がある。